救急車って、サイレンを鳴らして走ってくるから「よっぽどヤバい人を運んでる」って思われがちなんですよね。まあ、そういうケースも確かにあります。でも、現実はというと――そうでもない出動がかなり多いです。
今回は、現場にいる消防士の目線で、
- タクシー代わりの通報
- 病院から「救急車で来て」と言われるケース
- 軽症なのに救急車を呼ぶ理由
- なぜ救急車が足りなくなるのか
このあたりをまとめて話します。結論から言うと、制度と認識のズレが原因だったりします。
「それ、タクシーでよくない?」と思う通報
正直に言います。現場では、
- 歩ける
- 会話できる
- 痛みはあるけど我慢できる
- 発熱はあるけど元気
こういう人の搬送、珍しくありません。
で、本人に聞くとだいたいこう返ってきます。
「自分で行くのが不安で…」
気持ちは分かります。でも、救急車は“不安解消サービス”ではありません。限られた台数で、本当に今すぐ処置が必要な人のために使われるものです。
タクシーや家族の車で行ける状態なら、そっちを選んだ方が、結果的に自分も早く診てもらえます。
「病院から救急車で来て」と言われる問題
これ、現場ではかなり多いです。
「病院に電話したら、救急車で来てくださいって言われました」
いやいや、ちょっと待ってと。
点滴もしてない、酸素もいらない、バイタルも安定。どう見ても緊急性が高いわけじゃない。それでも“救急車で”と言われる。
理由はシンプルで、病院側のリスク回避です。
- 何かあったら困る
- 自力で来て途中で悪化されたら責任問題
だから「救急車で」と言う。でもその結果、救急車が1台ふさがるんですよね。
軽症でも救急車を呼ぶ人が増えた理由
これ、個人のモラル低下だけの話じゃないです。
- 高齢化
- 独居世帯の増加
- 夜間に相談先がない
- 「様子見」が怖い社会
こういう背景が重なって、「とりあえず119」が増えている。
しかも日本の救急車は基本無料。
無料だとどうなるか。使われます。これはもう、人間の行動として当たり前です。
救急車が足りなくなる本当の理由
「救急車が足りない」「到着が遅い」
そう言われることがありますが、理由は単純です。
出動してるからです。軽症でも。
1件の軽症搬送でも、
- 現場到着
- 観察・判断
- 病院選定
- 搬送
- 引き揚げ
これで1〜2時間は普通にかかります。その間、その救急車は使えません。
つまり、
本当に命に関わる通報があった時、近くに救急車がいない
こういう事態が起きる。
「サイレンは鳴らさないでください」と言われる違和感
これも、かなり多いです。
「近所迷惑なので、サイレンは鳴らさないでください」
気持ちは分からなくもないです。でも正直に言うと、急いでほしくないなら救急車を呼ぶべきじゃない。
救急車は“緊急走行”が前提の乗り物です。サイレンを鳴らさないということは、
- 法定速度を守る
- 交差点で一時停止
- 一般車両と同じ扱い
つまり、急がないという選択です。
それでいて「早く来てほしい」「すぐ病院に連れて行ってほしい」と言われると、現場としてはかなり矛盾を感じます。
周囲に配慮したい、目立ちたくない。その気持ち自体は否定しません。ただ、
静かに、でも最優先で来てほしい
これは成り立ちません。
サイレンは迷惑をかけるための音じゃなく、命を守るために道を空けてもらう合図です。そこを拒否するなら、救急車ではなく別の手段を選ぶ方が現実的です。
「救急対応だと料金が高くなる」って本当?
これも、よく聞かれます。
「救急車で来たら、病院代が高くなるって聞いたんですが…」
結論から言うと、救急車に乗ったから高くなるわけではありません。高くなる理由は、病院側の“対応区分”にあります。
救急外来加算というものがある
病院が「救急対応」と判断した場合、通常の外来とは違い、
- 医師
- 看護師
- 検査体制
を緊急モードで動かします。その分として、救急外来加算がつきます。
金額は内容や重症度によりますが、数百円〜数千円程度。
これは救急車で来たかどうかではなく、救急として診たかどうかで決まります。
夜間・休日・深夜は、そもそも高い
もう一つ大きいのがこれです。
- 夜間
- 休日
- 深夜
この時間帯は、同じ診察内容でも時間外加算がつきます。
つまり、
夜に体調が悪くなって、救急外来を受診した
この時点で、料金は昼間より高くなります。
これも、救急車だからではありません。
選定療養費がかかるケースもある
最近よく話題になるのがこれ。
大きな病院(紹介状が原則の病院)に、
緊急性が低い状態で直接来院した場合、
数千円〜1万円前後の選定療養費がかかることがあります。
これ、
- 自分で来ても
- 救急車で来ても
条件を満たせば請求されます。
「救急車で来たから取られた」と思われがちですが、
実際は病院の入口の問題です。
なぜ「高くなった」と感じるのか
- 夜間
- 救急外来
- 大病院
この3つが重なると、
「救急車で来たら高かった」
という印象になりやすい。
でも実際は、
その時間・その場所・その対応だから高かった
というだけの話です。
民間救急・介護タクシーという選択肢
ここで、ぜひ知っておいてほしいのが
民間救急や介護タクシーという存在です。
- 歩ける
- 座っていられる
- 意識がはっきりしている
- 医療処置をしながら搬送する必要がない
こういった場合、実は民間救急や介護タクシーの方が適しているケースが多いです。
費用はかかりますが、
- 予約できる
- 病院まで確実に行ける
- 救急車を待たなくていい
というメリットがあります。
一方で、119の救急車は
- 本当に緊急性が高い人
- 今すぐ医療介入が必要な人
のために確保されるべきものです。
「お金がかかるから救急車」ではなく、
**「状態に合った手段を選ぶ」**という考え方が広まってほしいと、現場では思っています。
じゃあ、どうすればいいのか
答えはシンプルです。
- 歩ける
- 意識がはっきりしている
- 呼吸が苦しくない
- 出血が止まっている
この条件なら、まずは自力受診や相談窓口を考えてほしい。
もちろん、「迷ったら119」は間違いじゃありません。でも、本当に必要か一瞬だけ考える。それだけで、救われる命が変わります。
救急車は、誰かの“最後の切り札”です。
タクシー代わりに使われることで、その切り札が間に合わなくなる。
現場にいる側としては、ただそれだけを伝えたいんです。